世間では「認知症」が一般に知られるようになり、特別な人だけにかかってしまう病気ではないことは、あなたも周知のことでしょう。
でも、実際に認知症になってしまった人と、あなたは接したことがありますか?
もし、自分の家族の誰かが認知症になってしまうと、家族生活に色んな影響を及ぼすようになります。
ここで告白しますが、実は85歳になる私の母親が、半年前から認知症になってしまったのです。
認知症の家族を持ってしまった一家は、今後どのように本人と接すれば良いのでしょうか?
今回は、認知症の家人との付き合い方に付いて、考えてみようと思います。
ウチの母親は認知症になって生活が昼夜逆転した
もともと認知症には、なりやすい人となりにくい人があると言います。
毎日規則正しい生活を送り、日課をきちんとこなしている人は、認知症になりにくいと一般的に言われていますね。
またあまり細かいことにこだわらず、大らかな性格で行動的な人も、そうであるようです。
反対に、不規則になりがちな毎日で、どうでも良いことに強いこだわりを持つ人、趣味が少なくあまり他人と関わることを好まない人は、なりやすい傾向にあるみたいですね。
私の母はと言うと、まさにこちらの方にはまっていたんです。
若い頃から家族の生活リズムに合わせないことがあり、食事も「今食べたくないから、後で食べる」と言って、昼寝をしてしまうことがありました。
また、私が会社員時代のことですが、残業で帰りが遅くなると気になって気になって、いつまでも床に就かず起きていたことも。
当時私は、心配してくれて有難いと思ったものですが、今思うとその頃から兆しがあったのかも知れません。
特に夢中になるような好きなこともなく、趣味はなかったような気がします。
今でも、自分から進んで行うことと言えば、せいぜい近所を散歩するくらいです。
そんな母でしたが、2年ほど前から腰が痛いと繰り返し言うようになり、整体院に時々通うようになりました。
散歩に行くことは減り、昼の間は居間でゴロゴロすることが、多くなったのです。
すると居眠りが増え、それが要因になり、今度は夜眠れないと言い出すように。
振り返ってみると、これが認知症の引き金になったのでしょう。
夜中に床から起きて、朝まで家じゅうをゴソゴソと動き回り、昼間はウトウトぼーっとするようになりました。
その内、こんなことを口に出すように・・・。
夜7時頃に昼寝から起きて、「寝過ごして、朝になっちゃった」と。
ただ整体院通いだけは続けたので、腰の具合は快方に向かったのですが、昼夜逆転する生活は直りませんでした。
昼夜逆転する生活が続くと、どうなると思いますか?
少し前の記憶が、段々とおぼろげになって行くのです。
そしてその影響か思い違いや、したことをやっていないと、言い張ることが多くなって来るんですね。
数少ない近所の仲良しさんの約束を忘れたり、約束を覚えていても気が変わって、直前に誘いを断ることもしばしばです。
心配する仲良しさんの気持ちも考えないので、次第にお誘いもなくなってしまいました。
認知症が進んで態度が暴力的になり家族までイライラ
母の昼夜逆転する生活は、今も続いています。
それも毎日です。
夜一旦床に入り、深夜2時~3時に起き出して来ます。
起きると家じゅうの明かりを灯すんですね。
夜から朝にかけ一晩中、寝室のトランジスタラジオは、付けっぱなしでいます。
起きて何をするのかと言えば、特に重要なことをする訳ではありません。
自分の身の回りのものを良くなくすので、なくなったことが気になり、ずっと家じゅうを探して歩き回り、タンスや戸棚、冷蔵庫の中を開け閉めしたりするのです。
私が気付いてこの行動を制止すると、「うるさい!」と怒り出す始末。
そのまま、決して探すことを止めません。
たまに玄関の扉を開けっ放しで外へ出て、どこかへ出掛けることがあり、それに気付いた私の妻が慌てて追いかけたこともあります。
母はいつも父と一緒に寝ていましたが、彼女の奇行で不眠になってしまい、現在は別の部屋で寝るようになりました。
こんな母ですが、不思議なことに昼間とても機嫌が良い時があり、その時だけは普通の人になります。
ところが父や私が、何気なく発した言葉や取った行動に突然怒り出し、それをとがめると暴力的になって激しく抵抗します。
近くにあった菓子などを、投げつけることもあるんですよ。
何を言ってもきかないものですから、我々家族の皆んなはそのたびにイライラ。
時には私が我慢できなくなって、物を投げたりすることもありました。
思わず「いい加減にしてくれ!皆んな困ってるんだ」と、怒鳴ってしまうことも・・・。
いや、こんなことではいけませんよね。
認知症になった母と家族の付き合い方とは?
認知症の症状が出ると、母は人が変わったように、わがままで暴力的になります。
それはまるで親に叱られ、所かまわず泣き叫ぶ幼児のようです。
介護保険は適応の申請をしているので、病院や施設など専門機関のお世話になることは可能です。
しかし、父は今の時点ではそれを拒んでいます。
はっきりと拒む理由を言いませんが、どうやらそれをすることに、切なさを感じているようなのです。
母は確実に認知症になってしまいましたが、長年連れ添った自分の妻の世話を他人にゆだねることに、気ずつなさがあるのでしょう。
こんな母親ですが良く注意してみると、ただめくらめっぽうに行動しているのではなく、自分なりの世界を持って行動している様子も見受けられるんですね。
彼女は一般の人として見れば、大きな勘違いをしている人ですが、自分は正しい道を歩んでいると、認識しているふしがあるような一瞬をたまに見せるのです。
「自分は正しく行動してるのに、皆んなどうしてそれを否定するんだ」と言いたくて怒るのかも知れません。
そこで私たち家族は、母の行動全てを否定するのではなく、彼女が何を思ってそんな行動・態度を取るのか、少し距離を置いて考えてやるべきだと言うことに気付きました。
母はもう、認知症から立ち直ることはできないでしょう。
ごく最近は、トイレも上手くできないようにもなりました。
でも、このことは自分も悔しい思いをして、恥ずかしい気持ちがあるようです。
粗相をしたことに、否定をしないからです。
なので、できるだけ彼女の持つ尊厳を傷付けずに、優しく皆んなで守る気持ちで、人生を全うさせてあげようと思っています。